シン・トー

読書とか、日常の中で感じたこととか、空想とか

時間とにおい

アンバータイム

時間というものは、
現在を、甘美な匂いのする過去の記憶という琥珀へと変えてしまう。
あんなに辛いと思っていた時間が、感傷のこもった空気感ともいえる匂いに変わり、
辛さという感情をどっかへ捨て去られてしまう。
本当に不思議だと思う。
逃げ出したくなるその時の感情は、今となっては、逃げなかったことへの自己への賞賛となっている。
それは親しい他者へ向ける感情と変わらない。
琥珀の色を僕はあまり好きではなかった。
琥珀を宝石のように、装飾品として持つ事を、僕は不思議に思っていた。
正直、気持ち悪いとさへ思っていた。
琥珀の美しさは、
その過去の記憶への、本当の意味で過去の記憶となったことへの、達観と、愛おしさを持てることができた時に、
初めて気付く美しさなのかもしれない。
なぜなら、琥珀こそ過去の美しさであり、
それは、結晶ではなく、
ただ樹液に閉じ込められた時間そのものであるから。